温泉聞き書き-1

ある温泉で、農家のシニアの方々が、いろいろな話をしているので、
賑やかだった。
「温泉は、寝に来る所じゃない。話をしに来る所だ」

実にさまざまな話題が登場して、本を読むのとは違う、テレビを見る
のとは違う、おもしろさ。

死に方。
誰それが<もち>で死んだ。<こんにゃく>で死んだ。
喉を詰まらせて。

姑との確執。(若き日の。大昔の。)
一年たっても子供ができなければ出て行け、と言われた。
(普通は、三年子無きは去れ、というのに。)
こっちが悪いとは限らないのに。
あっちが悪いかもしれないのに。

息子達。
息子が跡を継ぎ、孫がその跡を継ぐのも決まっている。
別の息子は、精米所に勤めている。
また別の息子は、農協に勤めている。
この御時勢、大変めぐまれた、けっこうな話だ。

孫が小遣いをせびってくる。
2月中にディズニーランドに行くと、安い。
3月になると高くなるから、婆ちゃん、今のうちに小遣いをくれ、
と言うそうな。
「どこにねぇ、10万なんて」

保険金。
夫の死後、保険金が入った、という話を、大声でしているので、
幾ら入ったか、みんな、聞こえてしまった。
たいそう幸せな方だ。

まるで、鳥達のさえずりのよう。
眠くて、だんだん、声が遠くなってゆく。


     大いなる地の胎動や蕗の薹



"温泉聞き書き-1" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント